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いつかは誰もが高齢ドライバー

北辻利寿

2017年9月 9日

画像:足成

倉本聰さんが脚本を書いた連続ドラマ『やすらぎの郷』にこんな場面があった。

老人向け施設で暮らす石坂浩二さん演じる主人公・菊村栄らが、運転免許更新に出かける。そこで「認知機能検査」などを受ける。

菊村は合格したのだが、佐々木すみ江さん扮する岡林谷江は実車運転も含めた検査に通らず、免許を取り消されてしまう・・・。

 

高齢社会が進み、運転免許を持つ高齢者の数も増えている。

警察庁では事故の数を少しでも減らそうと、70歳以上の運転免許手続きに特別な講習義務を課した。

講義・視力などの検査そして実車運転からなる「高齢者講習」。

教習所のコースで実車運転をする「チャレンジ講習」など、簡単には免許更新ができないルールだ。

 

さらに今年3月から75歳以上に義務付けられたのが「認知機能検査」である。

これは、①時間の見当識(検査当日の年月日や時間を回答)、②手がかり再生(16種類のイラストを記憶して回答)、③時計描画(時計の文字盤を描き、指定された時刻の針を描く)・・・この3種類から成り、ドラマではこの内、②「手がかり再生」の場面が紹介されていた。

16種類の絵は、AからDまで4パターンの組み合わせがある。

例えば、Aパターンでは、「大砲」「オルガン」「耳」「トランジスタラジオ」「てんとうむし」「ライオン」「筍」「フライパン」「ものさし定規」「バイク」「ぶどう」「スカート」「ニワトリ」「薔薇」「ペンチ」「ベッド」この16の絵を記憶して、しばらく他の検査をした後に、覚えている分だけすべて答えるというもの。

ホームページなどでも公開されているので、私も試してみたが、なかなかの難問でもあった。

それだけ、ハンドルを持つ年齢のハードルは高くなっているということだろう。

さらに道路交通法では、75歳以上の高齢ドライバーが「信号無視」「通行禁止違反」「進路変更禁止違反」など18種類のどれかの違反をした場合、臨時の「認知機能検査」も新たに義務付けた。

 

交通死亡事故の数が14年連続で全国ワースト1の愛知県で、今月3日、相次いで2件、高齢者が関わった交通死亡事故があった。

この内、北名古屋市の事故は、79歳男性が運転する乗用車がバイクに追突してバイクの男性が死亡した。

また、豊明市の事故は88歳男性の運転する乗用車がこれも高齢者である86歳が乗った自転車と出会い頭に衝突して自転車の男性が死亡した。

 

愛知県の去年1年間の交通死者の数は212人だが、65歳以上の高齢者は117人と実に半数を超えている。

117人の内で四輪車での死者は30人。

65歳から74歳が14人、しかし75歳以上はそれを上回る16人だった。

 

こうしたルールでの事故防止の動きと共に、運転免許を自主的に返納することを促す動

きも加速している。

「高齢者運転免許自主返納サポーター」登録をしている店などで、「運転経歴証明書」を提示すると、薬や飲食の割引サービスも受けられる、スーパー銭湯の入場料も割引対象である。

もっとも、葬儀関連費用の割引については、「ここまでやるか」との思いは否めないが・・・。一方で、高齢者が暮らすのは公共交通機関が充実している都会ばかりではない。

その意味ではまだまだ新たな一歩が始まったばかりと言えそうだ。

 

冒頭のドラマで、免許証を取り上げられて怒った老女は、施設を訪れた客の外車を無断

で借りて、高速道路を猛スピードで逆走する大騒ぎを起こす。

事故が起きなかったのはドラマの世界だから。

「年寄り笑うな行く道じゃ」という言葉もあるように、老いは誰でも歩む道。

でも誰かを傷つけないよう"ブレーキ"だけは意識して歩みたい。

 

東西南論説風(8)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】