ビニール傘を使っていますか?

北辻利寿

2017年12月14日

画像:足成

人気ドラマ『刑事コロンボ』に1972年に制作された「ロンドンの傘」という一篇がある。

イギリスの舞台俳優夫婦が殺人を犯してしまい、ロサンゼルスからロンドンに出張中のコロンボが事件を解決する。

まだドラマを観ていらっしゃらない多くの方に楽しんでいただきたいので内容については触れないが、事件の解決には傘が大きな役割を果たす。

シリーズの中では「二枚のドガの絵」「権力の墓穴」などと並んで大好きな作品だけに、いつかロンドンで傘を買いたいと漠然と思っていた。

 

そんな機会がやって来た。

ロンドンに行った際に、友人から紹介されて1軒の傘屋を訪れた。大英博物館の近くだった。

「自分の背丈に合わせた傘を作ってくれる」と教えられた通り、店では素材を選ぶことから始まった。

メープル(楓)を選択した。店の主人は1本のメープルを私に持たせ、先端を床面に着かせて長さをチェック、切断しながら調整していく。サイズが決まったら次は骨組みだ。

布の柄も自分の好みで選ぶことができ、20分もたたない内に、世界に一つだけの"私の傘"ができ上がった。20年以上前のことだ。

 

ところが・・・せっかく夢がかなったというのに、これは自分の性格によるものなのだが、

何だかもったいなくて使うことができない。

どこかに置き忘れてきたらどうしよう?間違えられて無くなったらどうしよう?などと余計な心配をしてしまう。

ずっと下駄箱の棚に仕舞っていたが、傘は使ってこその傘、と一念発起して使い始めた。しかし、ある日、突然の雨に見舞われてコンビニエンスストアでワンタッチ機能付きのビニール傘を600円で買った。

使い始めたら軽い上に丈夫で、ついつい継続して使ってしまい、ロンドンの傘は、再び傘立てに入れたままになってしまった。

 

かなり長い前説をお許しいただき、これより本題である。

最近ますます、ビニール傘を使う人が増えていることに気がついた。

バス停で見かける年配のサラリーマンの手にも、職場や居酒屋の傘立てにも、ビニール傘が目立つようになった。

周囲に尋ねてみると「気楽に使えるから良い」「店に飲みに行っていても忘れてはいけないという心配が不要」という答が大勢を占めた。

 

ウェザーニューズが2017年5月から6月にかけて実施した「傘調査2017」で興味深い数値を見つけた。

「持っている傘のうち、ビニール傘は何本?」という問いに、1本が26%、2本が20%。やはり持っている。全国の平均はビニール傘1.6本だったが、都道府県別では東京都の1.9本が1位。ウェザーニューズでは「大都市にはコンビニエンスストアなど購入できる場所が多いのでは」と分析している。

また傘全般について「今持っている傘は平均いくら?」という問いには、0~500円が18%、600~1000円が33%。1000円以下で合わせて調査回答者の51%なのだから、値段から察するに、やはりビニール傘の需要が増えていることがうかがえる。

 

同時にビニール傘の機能は格段にアップしている。

もともとは1人用の小さなサイズだけだったと記憶するが、今では、50cm、60cm、63cm、65cm、そして70cmとサイズも増え、それぞれに透明と乳白色の2種類がある。

最近ではワンタッチ機能が付いたものが多い。それでいて値段は安い。手軽に差すことができる。そしてコンビニや薬局などで簡単に買うことができる。

ここまできちんとした傘になってくると、"使い捨て社会"などという言葉は似合わず、ビニール傘も十分に「市民権」を持ってきている。

実際、デザインや形も凝ったビニール傘が増えてきている。

 

傘は魅力ある生活必需品だ。

どこか憂鬱な雨の日の外出、それを少しでも明るく演出するために、お気に入りの傘を持つのはやはり楽しい。

そこに、ビニール傘が決して"臨時の代替品"ではない存在として加わってきた・・・そんな時代なのだろう。

 

ロンドンの傘の代わりに使っていたビニール傘を、通勤途中のバス車内に置き忘れてしまった。

交通局の「忘れ物取扱所」を訪れ、待つこと30分。

「気楽に使えるから良い」のではなかったのか?

「忘れてはいけないという心配が不要」ではなかったのか?

だから「ロンドンの傘」を使わなかったのではなかったのか?

わざわざ時間を割いてこの場に来ている我が身に自問自答していたが、結局ビニール傘は帰ってこなかった・・・。

 

あなたはどんな傘を使っていますか?

 

東西南論説風(22)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

東京五輪マスコットは全国の小学生が投票!

北辻利寿

2017年12月 4日

【CBCテレビ イッポウ金曜論説室】


2020年の東京オリンピック・パラリンピックの大会マスコット、どうやって決まるのかご存知ですか?実は全国の小学生たちの投票によって決まるのです。


大会組織委員会では、2017年8月にマスコットデザインを全国から募集しました。

1998年の長野での冬季大会の時は「スノーレッツ」と名づけられたフクロが大会マスコットでしたが、今から53年前の1964年の東京オリンピックでは大会マスコットという存在がありませんでした。
このため、夏季大会としては日本で初のマスコットになります。
全国から2042件の応募があり、12月7日にこの中から選ばれた3作品が発表されます。そして、この後の最終審査を行なうのが、実は全国の小学生たちなのです。

 


大会マスコットは「選手や訪問客を歓迎し、大会を盛り上げ、その価値を伝え、日本の文化や魅力を紹介する重要な役割」と組織委員会は位置づけていますが、そこでの主役は将来を担う子どもたちだと話しています。

このため、マスコット選考にも、その思いを反映させました。
それが、全国の小学生たちによる最終投票でマスコット決めるという選考スタイルとなりました。
すでに全国2万1000を超える全国の小学校には、組織委員会から投票への参加登録用のはがきが届いています。
投票はクラス単位で行なわれ、組織委員会によりますと、その数は全国で28万クラス、すなわち投票総数は28万票ということになります。


投票には小学校ごとに参加登録が必要です。参加を希望する学校は届いた選考はがきに記載されているIDとパスワードによって、インターネットで登録します。

そして最終候補3件の中から、最も大会マスコットとして相応しい1件をクラスごとに選んで投票します。
投票期間は12月11日(月)から来年2月22日(木)で、登録さえすれば、この間はいつでも投票することができます。

オリンピック・パラリンピックの大会マスコットを小学生の投票で決めるのは"世界初"の試みということです。

大会組織委員会では「マスコットは皆のためのもの。子どもたちの身近な存在として位置づけてほしい」と、投票への積極的な参加を呼びかけています。
最終結果の発表は来年2月28日に決まりました。さて、どんな大会マスコットが子どもたちによって選ばれるのか、楽しみですね。

東京オリンピックは2020年7月24日から8月9日、パラリンピックは8月25日から9月6日の日程でそれぞれ開催されます。

【イッポウ「金曜論説室」より  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

ドラゴンズもっと目立ってよ!~新入団発表の会場より~

北辻利寿

2017年11月28日

プロ野球の新入団選手発表はいいものである。

ドラフト会議で指名され、これからプロ野球の世界に飛び込んでいく若い選手の夢と希望が、ほどよい緊張感の中で咲く。

 

11月27日に名古屋市内のホテルで行なわれた中日ドラゴンズの新入団発表会場では、育成を含む8人の若竜たちが真新しいユニホームに身を包み登壇した。

将来の夢について「首位打者」「奪三振王」「盗塁王」など次々と大きな目標が飛び出す。「清宮(幸太郎)選手から空振りを取りたい」という高校生投手もいた。

その志(こころざし)や良し。      

 

「明るい話題は京田だけだよね~」・・・このシーズンオフ、周囲にいる複数のドラゴンズファンがほぼ同じような言葉を口にしている。現状まったくその通りだ。

 

5年連続のBクラスと低迷を続ける中日ドラゴンズだが、オフに入って正直あまり目立つニュースがない。

1年前は森繁和新監督が誕生し、最下位ながらもそれなりに話題にはなっていたと記憶する。

「だけ」と言われる京田陽太選手は、ルーキーイヤーの2017年、ショートのレギュラーとして活躍、セ・リーグの新人王にも選ばれた。

新人王発表直前の「アジアプロ野球チャンピオンシップ」でもスタメンとして優勝に貢献した。

ドラゴンズにとって待望久しい若いレギュラー野手だが、京田選手の後が誰も続かない。来季への胸ときめく話題が少なすぎる。

 

オフの大きなイベントである11月のドラフト会議を前に、来季に向けてドラゴンズが補強したいポイントを整理して、このコラムでも紹介した。

課題は多い。5つもあった。

①先発投手 ②抑え投手 ③正捕手 ④代打の切り札 ⑤スター選手

 

実は現時点、そのどれもがクリアされていない。

ドラフト1位指名で入団した鈴木博志投手はクローザーを希望しており、かつての与田剛投手(現・楽天コーチ)のようにルーキーでいきなり活躍できれば②は解決する。

ただ入団会見で森監督も「決めるのは監督である私」と明言したように、これから適性を見てからの話となる。

現在進行中のFA交渉で捕手を獲得できれば③もメドは立つ。

しかし、新入団選手を見渡しても将来はともかく①と④は未解決。さらに今のドラゴンズに実は最も必要な⑤、単なるスター選手でなく「全国区のスーパースター」を求めたいのだが、清宮幸太郎選手の指名を見送った瞬間に潰えた。

1位の抽選で"甲子園のスター"中村奨成捕手を広島カープに獲られてしまったこともそれに輪をかけた。逃した中村捕手が1年目から活躍できるかどうかはともかく、「クジを外した」という悔しさとマイナスイメージは残った。

京田選手は⑤を満たす選手になる可能性は十分にあるが、まだこれから先のことである。

 

なぜ「全国区のスーパースター」が必要なのか?

本拠地ナゴヤドームの入場者数は1試合平均の観客数が2万8千人余りと、ナゴヤドーム開場21年の歴史の中で、過去最低だった。

スポーツは1人のヒーローによって一夜にして構図が変わる。

勝つことはもちろん至上命題だが、5年連続Bクラスと低迷が続くチームには強力な"起爆剤"が必要なのだ。

沖縄には行かず、ナゴヤ球場だけで全日程を行なった秋季キャンプも、特に目立った話題もなく終了した感が否めない。

今オフのドラゴンズには何だか"凪"のような日々が続いている・・・。

 

オフの主役チームは、言うまでもなく北海道日本ハムファイターズだった。

全国区のスーパースター大谷翔平選手を米メジャーリーグに送り出し、そして同じく全国区のスーパースター清宮選手をドラフト1位指名の抽選に勝って迎え入れた。

ドラゴンズに先がけて行なわれた入団会見の会場はホテルなどでなく、札幌市の大倉山ジャンプ競技場。真っ白な白銀の世界での新戦力お披露目だった。さすがと言わざるをえない。

8人の若竜が加わったドラゴンズ、かくなる上は来季のペナントレースで主役の座を勝ち取るしかない。

そのために、選手たちすべてにはオフの日々を心して過ごしてほしいと願う。

Bクラスが続く球団史上ワースト記録は今なお継続中なのである。

オフの日々は短い。球春はあっという間に訪れる。 

東西南北論説風(21)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

日馬富士問題に見る危機管理のツボ

北辻利寿

2017年11月20日

「危機管理」に最も大切なものは何か?

それは起きたことに対応する「スピード」すなわち「迅速さ」である。

これがあってこそ、事態打開の次の一手が打てるからだ。

 

リスク管理に詳しい中島茂弁護士は著書『最強のリスク管理』(金融財政事情研究会刊)

の中で「情報伝達は迅速でなければならない」としながら「現場はリスク情報の吟味をせず、ためらわず上に上げるように徹底しておく必要がある」とまで指摘している。

横綱・日馬富士の今回の暴行問題について、日本相撲協会の組織内コミュニケーションと危機管理対応には首を傾げざるをえない。

 

暴行問題が発覚して6日目の11月19日、日本相撲協会の危機管理委員会は、ようやく今回の"主役"横綱・日馬富士から直接、事情聴取を行なった。

「問題が発覚してから」6日目である。

しかし相撲協会が今回の事態を認知したのは、その2週間近く前のことであり、遅すぎるという指摘は免れない。

相撲協会は発覚当初「危機管理委員会を立ち上げて調査する。ただし九州場所が終わってから」と発表していた。そこに迅速さは欠片もなかった。

「本場所中だから」「警察の捜査を優先」という当初の姿勢も、結果として「本場所中」「警察の捜査中」にもかかわらず横綱の事情聴取に踏み切ったのだから方針変更を余儀なくされたのであろう。

同じ日に八角理事長は書面で「痛恨の極み」とのコメントを発表した。相撲界トップの正式コメントも問題発覚後、これも初めてである。

 

日馬富士問題は日一日と混迷を深めている。

その経過をあらためて俯瞰的に見直すと、この問題の様相も日々変化してきていることが分かる。

力士同士の暴行騒動が、協会内の対立構図にまで発展してきている。

それは情報の過多と不足、この相反する2つが勝手に走り出していることによるものであり、危機管理に対するスピード不足に起因している。

「なぜ暴行事案が明らかになるまでこんなに時間がかかったのか?」

「なぜ大ケガをしたはずの貴ノ岩が翌日も巡業で土俵に立てたのか?」

「なぜ貴乃花親方は被害届を提出しながら相撲協会に報告しなかったのか?」

「なぜ宴に同席していた横綱・白鵬は時間が経ってから証言したのか?」

「なぜ二種類の診断書が存在するのか?」・・・一連の「なぜ?」にキリがない。多すぎる。

警察の捜査について秘密保持は仕方なしとしても、この「なぜ?」が増えれば増えるほど、そしてひとつひとつに対する回答が遅れれば遅れるほど、ファンだけでなく世間の相撲界への不信は増していく。

警察ですら"配慮"しているほどの本場所、その大切な九州場所の土俵の熱戦すら"土俵外の問題"によって薄らいでいる。

 

相撲協会は警察の捜査優先と言うが、協会自らの調査は捜査とは違う。

あらためて言う。

協会が自ら積極的に調査し、判明したことだけでもその内容を速やかに発表するべきである。

当初注目されたビール瓶の存在はともかく、品格を求められる横綱が「殴った」ことを認めており、それだけでも大きな問題なのだから。

八角理事長はコメントの中で「関係者の聞き取りについても可能な範囲で進めていく」と語ったが、「可能な範囲」などではない。必要なことは「積極的に」である。真実はひとつ。この問題は警察の捜査が進む刑事事件であり、「角界の常識は世間の非常識」という言葉は通用しない。

特別な社会でのことではなく、私たちも一般的な感覚でとらえるべきだ。

 

「危機管理」の基本は「悲観的に準備して楽観的に対処する」と言われる。

起きた問題にはまずは大きく構えて取り組み、状況を見て対応を次第に解除していけば良い・・・という意味でもある。

四人の横綱を得て「満員御礼」が続く人気絶好調の相撲界。

悲観的になる気持ちも当然あるだろうが、「対処」を忘れてはいけない。

相撲協会の自主的そして積極的な調査に誰も「待った」はかけない。

危機管理に待ったなし!である。  

 

東西南論説風(20)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

トイレおしっこ考察~あなたは立つ?座る?

北辻利寿

2017年11月15日

画像:足成

古くからの友人の新居へ夕食に招かれた時のことである。
もう10年ほど前のことだ。
男友達ばかりの鍋パーティだったのだが、宴の途中でトイレを借りた際に、洋式便器の上に貼り紙を見つけた。
「トイレは座ってお使い下さい」と書いてあった。
その際は小便だったのだが、便器に腰かけて用を済ませた思い出がある。

「あなたは自宅のトイレでオシッコをする際、どのようにしますか?」・・・特定非営利活動法人(NPO法人)日本トイレ研究所が、このほど全国20~69歳の男性515人を対象にしたインターネットでのアンケート結果を発表した。
それによると、男性の場合「立ってオシッコをする人」55.3%、「座ってオシッコをする人」43.7%と、立ち派が多いものの、その割合は結構せり合っていることが判明した。
興味深いのは「座ってする人」の内訳で、「自分の意思で座ってする」が35.3%、「家族に言われたので座ってする」が8.3%だった。
もうひとつの質問で「自宅のトイレでオシッコをした後に、便器周りの飛び散り汚れをどうしますか?」という質問があり、これに対しては「拭く」が67.4%で、「拭かない」の11.1%を圧倒。さらに別の質問で、パンツやズボンのシミを指摘されたのは「配偶者から」という答がトップであるところから察するに、「座ってオシッコをする」「便器周りの飛び散りや汚れを拭く」という行動の背景には、家族、特に配偶者の存在があるのかもしれない。
男性にとってオシッコは「立ち小便」という言葉が表しているように、古来「立ってする」ものだったと思うのだが、これも時代と共に移り変わった"トイレ事情"なのだろうか。

逆に、もともとは座って行なっていたのに、立ってすることが増えてきたものもある。
会議である。
企業などで参加者が立ったまま打ち合わせを行う会議が注目されて久しい。
「立ち会議」とか「スタンディング・ミーティング」とか呼ばれており、「短時間で済む」「集中力が高まる」「意見交換も活性化」「会議室を用意する必要がない」「すぐに集まることができる」などのメリットがあり、採用する企業も多い。
たしかに腰を下ろしてしまうと、会議が必要以上に長引いてしまうこともある。
効率性を求めた"座りから立ちへのスタイル変換"であろう。

そんな社内会議などの休憩時間や終了後で注意しなければならないことは、再び話題はトイレに戻るが、そこでの会話である。
自宅以外の男性用トイレの場合は、小便用とボックスの2つに分かれているが、このボックスのドアが閉まっている時は要注意である。
トイレという空間は、排尿という人間の根幹に関わるとことがあり、ついつい無防備になりがちである。
会議の出席者が小便用の便器で並んでオシッコをしながら会議内容について会話を交わすと、ボックスの中にいる"誰か"に聞かれてしまう場合がある。
社内トイレの場合でも、社外の人が使用することがないとは言えないし、インサイダー取引防止についての研修会などでも注意事項として挙がる場合もある。

立ってするか?座ってするか?
私自身がどう回答するかについては、あえて差し控えさせていただくが、座ってする場合には便器のフタの裏側に飛び散ることも多いのでご注意いただきたい。
この経験談によって回答をお察しいただければ幸いである。

【東西南北論説風(19)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

"2人のトランプ"ASEANで初会談

北辻利寿

2017年11月10日

【CBCテレビ イッポウ金曜論説室】

トランプ米大統領のアジア歴訪は、ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議が開催されるフィリピンの地でクライマックスを迎えます。

11月13日からフィリピンのマニラ北西パンパンガ州で開催されるASEAN関連首脳会議は、これに合わせて議長国でもあるフィリピンのドゥテルテ大統領がトランプ大統領と初めて会談する機会になります。
"アメリカ嫌い"と言われているドゥテルテ大統領ですが、その一方で歯に衣着せぬ発言から「フィリピンのトランプ」とも呼ばれています。
すでに二人は電話会談を行っていて、ホワイトハウスの発表によりますと、トランプ大統領がドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招待したそうです。
これまでのアメリカ大統領との距離感よりは近いのかもしれません。
どんな初顔合わせになるのでしょうか?

ここでASEANについて簡単に復習しましょう。
ASEAN(Association of South‐East Asian Nations/東南アジア諸国連合は、1967年8月にバンコクで発足しました。今年でちょうど50周年を迎えました。
現在はブルネイ・カンボジア・インドネシア・ラオス・マレーシア・ミャンマー・シンガポール・タイ・ベトナムそしてフィリピンの10か国が加盟しています。
もともとは東西冷戦時代に、旧ソ連に対抗してアメリカ中心に絆を結ぼうとした"政治的な結びつき"の色合いが強かったのですが、その後"経済的な結びつき"へと変わってきました。

外務省の最新資料によりますと、ASEANの実質GDP成長率は2010年以降に持ち直し、現在は安定的な成長を維持しています。
また消費者物価上昇率も一部の国で高かったものの最近は落ち着きを見せています。
そして失業率も全体的に緩やかな改善傾向になるなど、経済全般は安定しています。
日本にとっても、対ASEANとの輸出輸入の貿易は、中国そしてアメリカに次ぐ3位、対世界貿易の15.0%を占める大切な経済パートナーです。

政治から経済へ・・・その結束の性格が変わってきたASEANですが、ここへ来て、再び
政治がテーマになりつつあります。北朝鮮情勢です。
実はASEAN10か国はいずれも北朝鮮と国交があります。
しかし、核ミサイルの開発を進め、アメリカに対して挑発行為を続ける金正恩体制に対し、ASEANとしても静観はできなくなりました。
今回の首脳会談に先がけて10月に行われた国防相会議では、北朝鮮に対し「深い懸念を表明する」共同宣言を採択しました。

そして迎える今回の首脳会談。トランプ大統領は今回のアジア歴訪の最初に日本を訪問し安倍首相と会談、「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に向けた協力強化、そして北朝鮮へ最大限の圧力をかけていくことで合意しました。
トランプ大統領と初会談するドゥテルテ大統領もこれに先駆けて10月末に来日し、安倍首相と北朝鮮情勢などについて意見交換しています。
ASEAN内には北朝鮮との「融和国」が多いのですが、アメリカ・フィリピン・日本この3人の首脳によるトライアングル関係を受けて、首脳会議の議長を務めるドゥテルテ大統領が北朝鮮対応でASEANの足並みをどう揃えるのか、日本・韓国・中国それぞれも対北朝鮮への対応が微妙に食い違う複雑な国際関係の中で、会議の行方を世界が見守っています。                        
【イッポウ「金曜論説室」より  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

【画像】
※CBCテレビ『イッポウ』

日本シリーズこれでいいの?

北辻利寿

2017年11月 7日

画像:足成

この制度がなかったら、2007年(平成19年)中日ドラゴンズの53年ぶりの日本一はなかった。

セ・リーグ2位からの日本シリーズ出場だったのだから・・・。

その意味では、この制度を無下に否定はしたくない思いもある。

しかしこれでいいのだろうか?

プロ野球でレギュラーシーズンを終えた上位チームが、日本シリーズ出場をかけて争うクライマックスシリーズ(以下CS)制度である。

 

2017年のプロ野球日本シリーズが終わった。

パ・リーグの覇者である福岡ソフトバンクホークスとセ・リーグ3位からCSを勝ち上がった横浜DeNAベイスターズの熱戦によって、今年のシリーズも盛り上がったと言えるだろう。

特に、シーズンで14.5ゲーム差をつけられていた広島カープをCSで破って日本シリーズに進んだDeNAラミレス監督の采配は「短期決戦に強い」と注目された。

データに基づく緻密な選手起用と勝負どころでの積極的な投手交代によって、3連敗の後に2勝してあわや逆転日本一かと勢いを見せた。

一方のソフトバンクもシーズン中のケガから復帰した内川聖一選手を待っていましたと4番に起用し、また日本一を決めた第6戦で守護神サファテ投手に初の3イニング投げさせた工藤公康監督の采配が光った。

両チームの高度な戦いによって、2017年のプロ野球も大団円となったが、もしあのままソフトバンクが4連勝して日本一になっていたら、おそらく「CS制度はこのままでいいのか?」という議論が持ち上がったはずである。

片方はシーズンで2位に13.5ゲーム差をつけて優勝したチーム、もう片方は1位に14.5ゲーム差をつけられた3位のチーム。

いくらルールだと言っても、日本一を争う対戦なのだろうか?

長いシーズンを戦った重みはどこにあるのだろうか?

広島カープが出場していたらどんな戦いをしたのだろうか?

 

ここで日本シリーズの思い出を辿る。

CSという制度がない時代でもその歴史には数々の熱戦があった。讀賣ジャイアンツが9連覇を達成した期間の1971年(昭和46年)、日本シリーズ第3戦、王貞治選手が、完封を続けていた阪急ブレーブスのエース・山田久志投手から打ったサヨナラ逆転3ランは、ドラゴンズファンながらも感動した名勝負だった。この年が7連覇目だった。

他にも、1978年(昭和53年)ホームランをめぐる阪急ブレーブス上田利治監督(故人)の猛抗議、1986年(昭和61年)最終戦で見せた西武ライオンズ秋山幸二選手のバク転ホームイン、翌年の同じライオンズ清原和博選手の涙・・・。

そして何と言っても、「江夏の21球」として語り継がれる1979年(昭和54年)、広島東洋カープと近鉄バファローズ、3勝3敗で迎えた第7戦。

1点リードでマウンドに上がったカープの江夏豊投手は、無死満塁という絶体絶命のピンチを21球によって抑え、日本一を勝ち取った。

パ・リーグには2チームによるプレーオフがあったが、そのいずれもCSという制度が導入される前のことである。

両リーグの覇者同士による素晴らしいシリーズ対戦であった。

 

2007年からのCS導入によって、シーズン後半の各チームの戦い方が明らかに変わった。

ある時点からはCS出場権を得るため、3位以内に入ることを目標に舵を切るゲームが見られる。

それが首位チームにさらなる独走を許す要因になっているとも言える。

そしてそれは大差での優勝につながり、いわゆる「消化試合」が増えることにもつながる。今シーズンはセ・リーグ6球団の観客動員数が史上初めて1400万人を超え、2年連続で最多更新をしたが、もしCSがなかったなら記録は更新できなかったかもしれない。

CSが果たしている役割は重要だという現実がある。

しかし、プロ野球は選び抜かれた選手がグラウンドで最高のプレイを見せる場、入場料を払って野球場を訪れるファンにとっては一期一会ならぬ「一試合一会」である。

本来CSがなくても「消化試合」などあってはならないと思うのだが・・・。

 

両チームの熱き戦いによって、結果的には盛り上がった2017年日本シリーズ。

広島カープがCSで敗退し日本シリーズに進めなかった時に巻き起こった、CSのあり方をめぐる議論も静かになっている。

"下剋上"の看板を背負ったDeNAの戦いは見事だった。

しかし、これで満足するのではなく、現行のCSのあり方を含めて、NPB(日本野球機構)には常に魅力ある日本プロ野球のために、検証と改善を進め続けてもらいたい。

 

東西南論説風(18)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

カタルーニャその危険な火種

北辻利寿

2017年10月31日

クレマカタラーナ(crema catalana)という菓子がある。

スペインのカタルーニャ州の名物菓子で、カスタードクリームを固めて表面を焼いてある。バルセロナを訪れた時にデザートに注文したのだが、フランスの菓子・クレームブリュレと似ていた印象だった。

香ばしい味を楽しみながら、バルセロナはスペインにありながら、実はほとんどフランスに近い街なのだと実感したことを思い出す。

 

そのバルセロナを州都に持つカタルーニャ自治州を世界が見つめている。

その行方を心配しながら・・・。

ちょうど1か月前になるが、10月1日、カタルーニャ自治州で独立の是非を問う住民投票が行われた。

その結果、独立賛成の票は90%に達したのだが、この動きに対してスペインの中央政府は即座に「投票は違憲である」との姿勢を打ち出した。

 

その後、ラホイ首相はカタルーニャ自治州の自治権停止と州議会の解散を宣言したが、

自治州のプチデモン首相は猛反発、州議会は一方的に独立宣言を可決した。

10月27日になって政府は、州議会の解散と新たな議会選挙を12月に実施すると発表し、州の自治権を停止し、プチデモン氏も首相を解任された。反逆罪に問われる動きもある。

一方でカタルーニャ自治州が独立に向けて一枚岩かと言えばそうではない。

住民投票の投票率は43%に留まっていて、独立反対派は棄権したと見られている。

この週末もバルセロナでは独立に反対する市民たち30万人によるデモが行われ、「スペイン万歳」と叫び、スペインは1つであると訴えるなど、カタルーニャをめぐる混乱は収まっていない。

しかし、ヨーロッパで起きているこの事態に、EU(ヨーロッパ連合)はスペイン政府を支持しながらも静観を続けているように見える。

 

古い歴史を持つヨーロッパでは、各地で独立への火種がくすぶっている。

かつて特派員として、旧ユーゴスラビアでセルビアからの独立をめざしたコソボ自治州を取材した時も、中東のパレスチナを取材した時も、歴史と現実の狭間で苦悩する人々の何ともやるせないパワーを感じた。

そこには哀しさが漂っていた。

今も英国はスコットランドの独立問題を抱え、ベルギーでもフランドル地方がフランス語圏とオランダ語圏に揺れている。

17州の1つにカタルーニャを持つスペインにはもう1つ、停戦を宣言したもののかつてはテロ活動を繰り返したバスク自治州もある。

今回のカタルーニャ自治州の独立問題が、他への連鎖を巻き起こすことをヨーロッパ全体が恐れている。

 

スポーツの世界にまで影響は及んできている。

「FCバルセロナ」に所属するジェラール・ピケ選手が独立支持をツイッターで表明、代表チームから外れるか否かという騒ぎにまで発展した。

また、カタルーニャの地元チーム「ジローナ」が首都マドリードの強豪「レアル・マドリード」を破った際には、中央に一矢報いたと街は大騒ぎになったと現地からの報道は伝えている。

20世紀末にコソボ自治州の独立をめぐり、セルビア共和国に対しNATO(北大西洋条約機構)が空爆を実施した時、Jリーグ名古屋グランパスに所属していたセルビア出身のドラガン・ストイコビッチ選手は「空爆をやめろ!」と英語で書いたシャツをピッチで見せてアピールをしたこともあった。

緑の芝生に似合わない悲しい場面だった。

 

ヨーロッパでは独立問題だけではなく、難民問題も解決されていない。

10月、オーストリアでは国民議会の選挙結果で、難民に厳しい政策を求める国民党が第一党になった。

9月にはドイツの下院選で極右政党が議席を伸ばした。

英国のEU離脱決定も難民への対応が1つの要因でもあったように、「ヨーロッパはひとつ」を謳い文句に実現したEUが直面するテーマは山積みである。

だからこそ、カタルーニャ問題に対して、EUの静観はありえないのではないだろうか。今回の独立騒動には歴史と共に経済問題が大きな理由となっている。

カタルーニャはスペインの中でも経済的に優位であり、自分たちが国を支えているという強烈な自負もある。

EUが経済圏としての一体を主張するならば、カタルーニャの独立問題をスペインだけの国内問題としてはいけない。

ヨーロッパ全体の問題として、本腰を入れて向き合うべきであり、今こそEUの積極的な動きに期待したい。

 

バルセロナの町には、カタルーニャ出身の建築家アントニオ・ガウディが残した教会や公園などの名所と並んで、ピカソ美術館がある。

館内にはピカソが、同じくスペインが生んだ画家ベラスケスの名画「女官たち(ラス・メニーナス)」を自分なりにアレンジした連作シリーズが展示されている。

ベラスケスの絵はマドリードのプラド美術館に、そしてピカソの絵はカタルーニャのバルセロナに・・・。

2つの都市は二人の画家の絆によって結ばれている。

東西南論説風(17)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

【画像】

※足成

ドラフトの神様が微笑んだ相手

北辻利寿

2017年10月27日

ドラフト会議の会場で"野球の神様"が微笑む瞬間を見た。

プロ野球ドラフト会議が開催されたホテルに一歩足を踏み入れた時、突然の熱気に身体が包まれた。
「清宮ドラフト」と言われるように、2017年ドラフト会議は、高校通算111本塁打を記録したスラッガー清宮幸太郎選手(早稲田実業)に何球団の指名があるのか、そして、どこのチームが獲得するのか、この一点に日本中の関心が集まっていた。
その熱気は会場だけではなく、ホテル全体に充満していた。
結果は7球団が1位指名をして、北海道日本ハムファイターズがクジを引き当て、スーパースターの交渉権を獲得した。

日本ハムのドラフト戦略は一貫している。
「その年の一番いい選手を指名する」・・・この方針に揺るぎはない。
2004年(平成16年)のダルビッシュ有投手から始まり、2007年は中田翔選手、2010年は斎藤佑樹投手を指名して獲得。
2011年には入団しない意向を伝えられながらも果敢に菅野智之投手を指名して、抽選に勝ったものの入団拒否を受けた。
それでも翌年、メジャー志向で各球団が敬遠した"二刀流"大谷翔平選手を指名して入団させたことは記憶に新しい。
そして今回も・・・。
日本ハムの木田優夫GM補佐が抽選に勝ち、高く手を上げた時、会場には「やっぱり日本ハムか」というどこか納得した空気が流れた。チームの潔さに"野球の神様"はまたしても微笑みを返した。
期せずして栗山英樹監督も語った・・・「野球の神様が大切な宝物を預ける決断をして下さった」。2017年ドラフトも歴史に新たなドラマを刻んだ。

これまでもドラフト会議は過去に数々のドラマを生んできた。
まず思い出されるのは江川卓投手である。
高校時代も大学時代もドラフトの舞台でその進路に注目が集まったが、讀賣ジャイアンツが強硬に入団を進めた1978年(昭和53年)のいわゆる「空白の一日」は、ドラフト会議はもちろん、プロ野球史に残る出来事だ。
PL学園のKKコンビ、桑田真澄投手と清原和博選手の入団をめぐる一幕も今なお印象に残っている。
近鉄バファローズ(当時)の佐々木恭介監督が、清宮選手と同じ7球団のくじ引きの末、PL学園の福留孝介選手を引き当てた「ヨッシャー!」という雄叫びも耳に残っている。数え上げればキリがない。

ドラフト会議は新戦力を獲得する場であると同時に、球団をアピールする場としても捉えることができる。
特に1位入札と指名の瞬間がテレビの地上波で生中継されるようになってからは、その意味合いも増している。
最近では、ソフトバンクホークスの工藤公康監督。2015年は3球団競合の高橋純平投手、そして1年前の2016年は5球団競合の田中正義投手の当たりクジを見事に引き当てた。全国の野球ファンにチームの勢いを見せつけた。
中日ドラゴンズで言うならば、1986年(昭和61年)ドラフトで監督に就任したばかりの星野仙一さんが、5球団が競合した地元の近藤真一投手を引き当て、高らかにガッツポーズをした場面が思い出される。
チームはあの勢いそのままに2シーズン後にセ・リーグ優勝をした。
今回のドラフト会議で清宮選手を1位指名した日本ハムは、7位では東京大学法学部の宮台康平投手を指名して、これも大きな話題になった。
球団アピールとしては大成功のドラフト会議だったと言えよう。

ずっと言われ続けている言葉だが、上位指名の選手が必ずしも活躍するとは限らないのがプロ野球の世界。
スカウトの目利きの次は、育てるコーチの手腕、起用する監督の采配、そして何より選手本人の自覚と努力。
一流のプロ選手が生まれるためには、こうした複合要素が成就する必要がある。
ドラフト会議はあくまでもスタートラインである。

中日ドラゴンズにとって今回はどんなドラフトだったのだろうか?
1位指名の抽選では甲子園のスター中村奨成捕手を獲得することはできなかった。
球団の勢いをアピールすることはできなかったが、ドラフト前に1位指名候補として挙げていた5人の内2人の投手を、1位と2位で獲得できたことは大きな収穫だった。
森繁和監督のインタビューを間近で聞きながら、監督が本心から欲しかったのは、代わりに1位で獲得できたヤマハの鈴木博志投手だったのではと確信した。
その鈴木投手には、かつて同じドラフト1位で活躍した与田剛投手(現・楽天コーチ)のように、抑え投手として開幕から活躍してほしい。
そしてすべて高校生だった残り5人の指名選手たち。5年連続Bクラスと苦しむドラゴンズには勢いのある若い力が必要である。
2~3年後など悠長なことは言わず、いきなり飛び出してきてほしい。

"野球の神様"は普段はドラフト会議の会場にはいない。
グラウンドでひとりひとりの選手を見守っている。それは全国各地の野球場で、そして、もちろんナゴヤドームでも・・・。

【東西南北論説風(16)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

総選挙は誤算の"嵐"だった

北辻利寿

2017年10月24日

実に不思議な総選挙だった。

10月22日に投開票が行われた第48回衆議院議員総選挙は、これまで経験したことがない様相を見せた。

キーワードをひとつ選ぶならば「誤算」。

それはマイナス面だけではなく、「思いもかけないことが起きる」という意味を含めてである。

「誤算」をキーワードに振り返ってみた。

 

9月1日に行われた民進党代表選、それを経て安倍晋三首相は臨時国会での衆議院解散を決意する。

解散を表明する日、記者会見の3時間ほど前に、小池百合子東京都知事が新党「希望の党」の立ち上げと自らの代表就任を発表した。

会見の前にまず上野動物園のパンダの赤ちゃん名前発表に続けて・・・という周到に舞台を整えた上での発表だった。

すでに小池新党の準備は進んでいたが、まさか総理記者会見の直前にそんな動きが来るとは・・・。

首相にとって最初の「誤算」と見る。

 

9月28日の衆議院解散に合わせて、今度は民進党の前原誠司代表が、党の公認は出さず、全員で「希望の党」へ合流することを電撃的に発表。

自民党のある幹部によれば、党内には相当な衝撃が走ったと言う。就任したばかりの前原代表が、ここまで思い切って政権交代をめざす行動に出るとは・・・これも安倍首相と自民党の「誤算」と見られていた。

政局を取り巻くムードは一気に高揚感を増した。

 

しかし、小池代表の2つの言葉で、「誤算」のカードは自民から希望へと移った。

合流しようとした民進党議員について小池代表が語った言葉・・・「全員を受け入れる気はさらさらない」「排除します」。

この「排除」という言葉を聞いた時、7月に行われた東京都議選の応援演説で、自分へのヤジを飛ばす一部聴衆に対して安倍首相が「こんな人たち」と言って批判を浴びたことを思い出した。

「さらさらない」「排除」この2つの言葉によって明らかに潮目は変わった。

希望の党へ合流できない民進党議員たちは、枝野幸男議員を代表とする立憲民主党を結党した。

さらに小池代表の側近・若狭勝氏が「政権をめざすのは次の次」的な発言をして、希望失速の一因にもなった。

 

攻守それぞれが「誤算」を繰り返した選挙前半戦は、まるで一手によって白黒が一気に逆転するオセロゲームを見ているようだった。

これまでも国政選挙を取材してきたが、大きな枠組がほぼ固まってから選挙戦がスタートしていた。

しかし、今回のように政策論争に至る前に、これほどめまぐるしく選挙の図式自体が変わるとは・・・これも「誤算」か。

 

選挙後半戦は、自民党が安定した支持を獲得した一方で、希望の党は首班指名を誰にするか示すこともなく支持を伸ばし切れない。

そんな中、いわゆる"排除された"側である立憲民主党の勢いは急加速する。

身を捨ててこそ浮かぶ瀬も有り、と言われるが、枝野代表にとっては、プラスの意味での「誤算」だったであろう。

しかし、投票の末、比例代表東海ブロックで5議席分の票を得たのだが、重複立候補者の内2人が小選挙区で当選したため、候補者の数が獲得議席に足りなくなり、立憲民主党の比例当選者は4人になった。

1議席分はルールで自民党に移った。

もう少し候補者を増やして擁立しておけば・・・。

これもここまで支持を集めて勝つと思わなかった立憲民主党の「誤算」。 

 

今回の総選挙の「誤算」は当事者である党や候補たちだけではなかった。

各地の選挙管理委員会にもあった。

投開票日に超大型で非常に強い台風21号が日本列島に近づく予報となり、期日前投票をする人の数が激増した。

名古屋市内のある区役所でも投票に訪れた人が長蛇の列を作り、「1時間待ち」の状態があった。

期日前投票でこれほどの殺到はこれまで例がなかったとは思うが、投票部屋の廊下どころか建物にすら入りきれない有権者に対して「可能な方はもう一度出直して来て下さい」と職員が呼びかけていた。

投票所に来た人の中にはあきらめて帰ってしまい、結局は投票を断念した人もいたと聞く。過去最低の投票率だった前回に続き、今回も悪天候だったとはいえ投票率が53.68%と過去2番目の低さだっただけに、期日前投票所での飽和状態は残念な「誤算」だった。

 

「誤算」続きだった選挙の締めは本物の"嵐"、投票当日の台風襲来である。

投票所周辺の道路が冠水、停電で投票不可能、さらに離島の投票箱が回収できなくなるなど、かつて経験したことがない数々の事態によって、一部の開票作業が翌日に持ち越された。

すべての議席が確定したのは翌日月曜日の夕刻だった。

「誤算」続きの総選挙は最後まで計算通りにはいかなかった。

 

「一寸先は闇」とも言われてきた政治の世界。

総選挙が終わり、再び日本の政治が本格的に動き出す。消費増税、安全保障、改憲問題、原発など将来へ重要テーマは多い。

ここでの「誤算」は決してなきように願うと共に、私たちはその行方をしっかりと見守る必要がある。                           

東西南論説風(15)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

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